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わくわく着物~着物の愉しみ~ 臥竜亭へようこそ!

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『本朝廿四孝』第2部

■ □■『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』通し狂言第2部-「武田勝頼と八重垣姫を巡る物語」■□■

「本朝廿四孝」って何? 聞き慣れないですよね。「廿四孝」とは、元の時代に編纂された中国の説話集で、孝行者の物語二十四編が収められているのだそうです。日本では慶長時代以降、和訳本が数多く刊行され、寺子屋などで孝行の教訓書として用いられるなど、広く世間に知られていたようです。「本朝」は「日本版」という意味。でも、ここで出てくる八重垣姫は、とっても「孝行娘」とはいえないと思うなぁ。恋しい男を慕う、とっても一途で可愛いお姫様です。お話はと申しますと…。
 
 越後の長尾謙信と甲斐の武田信玄は、諏訪明神から武田家へと授けられた「諏訪法性の兜(すわほっしょうのかぶと)」を巡って、長年争っていたが、足利将軍義 晴が何者かに暗殺されたため、一時休戦して犯人を探索することになり、休戦の印として、お互いの息子と娘を婚約させます。しかし、武田家の嫡男・勝頼は期限までに犯人を捜せなかった責任をとって切腹してしまいます。政略結婚とはいいながら、りりしく美しい勝頼に恋していた長尾家の息女・八重垣姫はそれ以来、勝頼の絵姿に香を手向け、念仏を唱える日々を送っていました。そして最近召し抱えられた腰元・濡衣も同じように亡き恋人の菩提を弔っていました。
 そんなある日、やはり最近召し抱えられた花作りの蓑作を一目見た八重垣姫は、勝頼に瓜二つなのにびっくり! 思わず部屋から走り出て、蓑作にすがりつく八重垣姫。「人違いでござりましょう」といなされ、それでも諦めきれず、濡衣に仲を取り持ってくれるよう頼むと、「諏訪法性の兜を差し上げればよいのでは」といわれ、あの兜をほしがるからには、やはり本物の勝頼に違いないとかきくどく八重垣姫と、あくまでしらをきる蓑作。それでは勝頼への操を立てて自害しようとする姫を慌てて止めた濡衣は、事の真相をうち明けます。実は切腹したのは偽の勝頼(実は家老の子で、濡衣の恋人)であり、蓑作こそが本物の勝頼であり、長尾家に奪われた諏訪法性の兜を取り返すため、濡衣と共に館へ入り込んでいると聞かされた姫は、許嫁が生きていた嬉しさに、「後とは言わず、いまここで…」と大胆に蓑昨(勝頼)に迫ります。
 しかし喜びもここまで。奥から蓑作を呼ぶ謙信の声に、慌てて部屋に逃げ込み、様子をうかがう姫と濡衣。塩尻の陣営へ手紙を届けるように言いつけられた勝頼が出発したのを見届けると、謙信は家来を呼び出し、すぐに追跡して討ち取るように命令します。謙信は蓑作が勝頼であることを見破っていたのでした。驚いた姫が嘆き悲しみむのも無視して、謙信は濡衣も武田の間者とにらんで捕まえてしまいます。
 なんとか勝頼に危険を知らせることはできないものかと思い悩む八重垣姫は、いつしか諏訪法性の兜を祀った祠のある奥庭にきていました。この上は神仏に祈るほかないと、兜を手に取り一心に祈り、ふと池に写る己の姿にびっくり! そこには狐が映っていたのでありました。これは諏訪明神のご神体ともいえる兜に、明神のお使いの狐の精が宿ったのかと思い当たり、諏訪湖に張った氷の渡り初めをするといわれている神の狐の宿る兜を持っていれば、湖を渡っていけるに違いないと喜び勇む八重垣姫。とめる捕手の者達をうち払い、父を裏切り、国を捨て、乙女心の恋一筋に愛しい勝頼の後を追って飛ぶように走り去るのでありました…。

「本朝廿四孝」といえば「これ!」というくらい、この場面だけがよく上演される、物語のハイライトです。華やかで分かりやすいお話ですからね。お姫様、きれいだし。
 実は私、これを見逃しています。八重垣姫=福助、蓑作=勘九郎、濡衣=玉三郎という豪華キャストだったのに。チケット、取ったのに。どうしても都合が付かなくなって、人に譲りました(T-T)。そして逃がした魚は大きい! 福助の八重垣姫を観たいのに、それ以降、どうもタイミングが合いません。玉三郎の濡衣も超観たかったなー。恋しい男を慕う玉三郎の口説きも聞きたいし、何より縄を受ける玉三郎もぜひ観たかった! お恥ずかしいわ、嗜好が偏ってて(#^^#)。
 劇中にある、湖面を渡るというのは、「御身渡り」という現象で、諏訪湖は寒くなると湖が岸側から凍っていくので、容量が増えて真ん中当たりが盛り上がり、数キロに渡って氷の山脈ができる事で、必ず諏訪大社の上宮から下宮の方向にできるので、諏訪神社の祭神が上宮から下宮へと渡った跡だというそうです。
 

 この出し物には、菊桐地紋の金茶色無地に、兜の柄の名古屋帯と、菊の帯留を合わせました。八重垣姫の衣装や舞台装置など、随所に菊が使われる舞台立てなのです。そして帯はもちろん、「諏訪法性の兜」。名古屋帯ですが、丁寧で超豪華な刺繍が施された、とても迫力のある一本です。

本朝二十四孝・着物

本朝二十四孝・帯




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